企業の強みを見つけるためのヒント

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「強み」の定義によって変わる「強み」の見つけ方

強みの「定義」と「見つけ方」は一体不可分な関係です。つまり、ある「定義」を前提として初めて、その「見つけ方」が適切かどうかを判別することができるのです。

たとえば、「イイ男(イイ女)を見つけたい」という場合、「イイ男(イイ女)」の定義をハッキリさせずに、夜の巷に繰り出したり、マッチングアプリに登録したりしても、目的を果たすことは難しいはずです。

したがって、定義を曖昧にしたままで色々な見つけ方を試したり、その逆で定義を明確にしたにも関わらず、見つけ方が不適切だと、何れの場合も強みは見つかりません。

企業の強みの定義については、こちら記事で書いています。

今日(こんにち)の経営課題は、自社の強みを知り、それを最大限生かした事業展開することであることは間違いありませんが、残念ながら真の強みを探り当てている企業が驚くほど少ないのです。

そもそも定義を誤ったり、適切な見つけ方を採用していないために、せっかく手中にした強みは偽物であることが多くなります。強みを基軸にした事業展開という基本方針は妥当でも、そもそも強みを取り違えていれば、どのような戦略も戦術も期待したような成果をもたらすことはありません。

そこで、企業の強みの見つけ方について考えていきます。

これまでの方法で真の「強み」を見つけることは難しい

強みの見つけ方として、これまで一般的に信じられきた2つの方法があります。

  1. ワークショップを開いて、全社員で検討する
  2. 顧客に聞く

どちらの方法も、顧客の共感を得られる事業における絶対にゆずれない“こだわり”という意味での強みを見るけることは難しいでしょう。

ワークショップを開催して全社員で検討する方法

一つ目の方法は、自分のことは自分で考えれば分かるはずだ、という信念に基づいた手法です。

しかし、あなたは自分自身の強みを聞かれて、即座にスラスラと語れるでしょうか? ほぼ全ての人が自分個人の強みですら明確に語れないものです。そうであるなら、企業についてのみ可能だと考えるのは希望的に過ぎます。

顧客にアンケートやインタビューをする方法

二つ目の方法は、自分のことは自分では分からないならば、他人に聞けば分かるはずだ、という信念に基づいた手法です。しかし、残念ながら「顧客は語れない」のです。

幸運にもあなたに配偶者か大好きな恋人がいたとします。果たして、あなたは相手のどこが好きなのか明確に語れるでしょうか。「優しい」「料理が上手」「美人」などなど、数多くの要素を並べることで、相手の良さを語ることはできるかもしれません。

では、あなたは優しくて、料理が上手で、美人だったら誰でも良いのでしょうか。いや、そうではないはずです。優しいとか料理上手とか美人であるとかは、その人の断片的な情報に過ぎません。

あなたが付き合いたのは、そういう条件を兼ね備えた人ではなく、「わたしが好きになった人」であるはずです。仮に大好きな人が料理下手でも、他にもっと相手の良いところを見つけるでしょう。

こういう条件だから好きだということではなく、好きになった人にはこういう良いところがある、というのが正しい表現になります。では、あなたが好きになる相手とならない相手の境目はどこにあるのでしょう。そのボーダーを語ることは、想像以上に難しいことに気付くはずです。

相手が人間でなくても同じことが言えます。あの店に二度と行かない理由は、誰でも明確に語ることができます。

だが反対に、この寿司屋が好きな理由をひと言で語ることは、とても難しい。断片的な条件ではなく、複数の要素が複雑に入り混じって好きの感情が形作られているからです。

嫌いになるのは、たった一つの明確な理由があれば十分ですが、一つの条件だけで好きになることはない。

したがって、顧客が選ばない理由を語ることは簡単ですが、選ぶ理由を明確に語ることは難しいのです。食べログのレビューが役に立たないことを身に浸みて感じている人なら、この話は容易に分かるでしょう。

「強み」を見つける際に重要な着眼点とは

残念ながら世の中に完全なるオリジナリティなど存在しないし、万が一あったとしても参照フレームが存在しない事柄を理解できないのが人間が持つ限界です。

我々が、あることを自由自在に考えたり感じたりしているつもりでも、実はかなり自分が身を置いている社会とそこの文化に規制されています。

コミュニティが共有している文化の大地に収まらないものは、そもそも認識されないために思考の対象にはなりません。

自分ではこだわりと思っていることが、ある世代全体で共有されている固有の枠組みに過ぎないことは、ジェネレーションギャップという言葉があることから分かるはずです。

そういう同世代の共通項を控除して、その後に残るもの、それが「こだわり」と呼ぶべきものになります。

世代が持つ固有の枠組みの他に、ある地域や民族が持つ固有の枠組みも当然あるので、自分の中から控除していかなければならない共通部分は相当な量になります。

さらに世代という狭い時間感覚を超えて、自分の世代を含んだ日本の戦後の文化とか、明治以降の文化や日本の近代以降の中で自分はどういう位置づけにいるのか、そういう歴史的な視点を持つことも必要になります。

つまり、こだわりを知るということは、消去法的作業になのです。そして、それは高度に知的な作業と言えます。

しかし、現に顧客が存在し、その顧客の中に理想の顧客と呼べる層が存在するなら、自社のこだわりが皆無ということはあり得ません。

こだわりは、必ず見つかるという信憑を持ってもらいたい。

では具体的にどうしたら、こだわり=強みを見つけることができるのでしょうか。

その答は、やはり自分と向かい合うしかありません。

企業なのだから、当然利潤は追求する必要があります。しかし、利益を上げるだけを目的としたビジョンは深い共感を生みません。

ビジョンを掲げてHPや社長室の壁に掲示している会社は多いのですが、どんなビジョンかという以前に、「なぜそのビジョンを掲げるのか」という理由の方がはるかに重要です。

聞き心地のよい戦略だけでは、人の心を動かすことはできません。

ビジョンや戦略が、顧客や取引先、そして社員の心を惹き付けるのは、そのビジョンや戦略の裏にある想いが伝わるからです。

表向きどんなに取り繕っても、裏に秘められた想いが本物かどうかはバレバレだと覚悟した方がいいでしょう。

だから経営者は自分の心に素直になった方がいい。金儲けが全てだというならそれでもいいでしょう。

それならば、社員にも顧客にも給料の高さや商品の安さといった金でメリットを提供し続ければいい。

想いには想いで答え、好きには好きで答え、損得には損得で答える。それが人間の心理です。

その意味で、こだわりが共感を呼ぶビジネスとは、経営トップの生き方が生み出すブランドであるとも言えます。

仕事をするうえで、「これだけは絶対に妥協しない」というもの。そのこだわりが共感を生むかどうかが重要なのです。

そんな、仕事でつながる世界観を共有するために、会社と仕事の歴史を共有することを勧めています。

会社の歴史とは、仕事をしてきた歴史だ。そして顧客に選ばれてきた歴史でもある。

ただし、重要なことは、過去に起きたでき事を共有するのではく、その背景にある想いを共有することです。

そのためには、実際に有った仕事上のエピソードを集めてみるといいでしょう。

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