不正経理をして粉飾決算をすることが危険な隠された理由とは

経営脳のトレーニング
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ナチュラルに見えると信じて厚化粧をしたくなる誘惑

銀行は、シミやシワ(=赤字)を持つ企業を好みません。健康的な素肌を持つすっぴん美人好きです。

だから、銀行とつき合いたい企業は普段から肌の手入れを怠らずに、いくつになってもシミ・シワ・荒れのない素肌づくりを心掛けます。

しかし、ちょっとした油断をして、日焼けをしてしまったり不摂生な生活を続けていると、あちらこちらにシミやシワが出てきます。

体の内面から整えて美肌を取り戻すのが王道ですが、人間の性として簡単な方法で問題解決を図る誘惑から逃れることができません。

そこで、化粧という方法でシミやシワを隠すようになります。

でも、すっぴんでないことがバレることは絶対に避けたいので、化粧はあくまでも「ナチュラルに見える」ことを最優先に行います。

企業における化粧とは粉飾決算のことですが、女性の化粧と企業の粉飾決算は、その動機とプロセスに共通点が多いのです。

しかし、異なる点もあります。

それは、企業は女性ほど化粧の技術が高くない会社が多いという点です。

より厳密に言うと、粉飾決算の手口はパターン化されているために、粉飾技術が際立って高い企業や他に類を見ないオリジナルな手法を駆使する企業は存在しません。

経営者本人は、ナチュラルに見えるメイクをしたつもりでも、見る人が見ればすぐに化粧をした場所が分かります。

銀行から融資を受けているが毎年折り返し融資で資金繰りを繋ぐ必要がある企業が一番恐れていることは、赤字を理由に新規融資を断られることです。

その気持ちは痛いほど分かります。

赤字を理由に融資を断られる・・・この深刻さは、経験した人でなければわからないでしょう。サラリーマンが、住宅ローンや自動車ローンを断られるのとは訳が違います。

だから、ついナチュラルに見える化粧に手を出してしまう。

でも実態は、周りから見ればアイプチがばればれなのに、本人だけがナチュラルなメイクだと自信満々なのです。

粉飾決算で企業の素顔が見えなくなることが一番危険

女性の化粧と企業の粉飾との違いは、さらに他の点にもあります。

粉飾決算をしている会社を見ていて一番問題だと感じるのは、本当の顔かたちが分からなくなることです。

女性の場合、昼間どんなに化粧をしていても、基本的に夜になると顔を洗ってすっぴんに戻ります。

ここに、現状確認という重要なポイントが維持されています。

本当はシミやシワがたくさんあること。少女漫画のヒロインのようなデカ目も本当は細い一重の目であること。こうした事実を、1日に1回確認することで、本来の自分を見失うことはありません。

しかし、企業は一度化粧をはじめてしまうと、夜になっても化粧を落とさずに寝てしまうズボラな女性と同じことになってしまいます。

一度も化粧を落とさないうえに、朝(=決算期)になると化粧が崩れたといって、さらに上塗りを繰り返していくことになる。

だから、自分の素顔が分からなくなってしまう。しまいには、お化粧でも飽き足らずに、会社分割のような整形手術をしたいと思うようになります。

もちろん、粉飾決算をすること自体良くないことで、場合によっては違法性が問われる犯罪です。

それとは別に、粉飾をすることで経営者自身が会社の実像を見失い、適切な経営の舵取りができない体質に変化していくことが経営上の隠されたリスクなのです。

粉飾を始めるときは、今期は特別な理由があって赤字だったけど、一回限りにして来期は頑張って取り返そうと考えています。

しかし、一度手を染めたら、まず抜けられないのが粉飾というもの。来期はさらに業績が悪化して、粉飾の上塗りをしていく・・・

粉飾決算をしていなくても実態を正確に把握出来てはいない

世の中には粉飾決算をしている企業の方が少ないのですから、それ以外の多くの企業経営者は実態を正確に把握していると考えているでしょう。

しかし残念ながら、粉飾決算をしていないからといって経営実態が正確に把握できていることにはなりません。

その理由を以前の記事で書いていますが、中小企業の場合、ほとんどが税法上のルールによって決算処理をしているからです。

税法上の歪みがある決算書を頭から信じている状態は、意図的に行われている化粧とは異なり、自分では健康なつもりでも、視力が落ちて正確な像を視認することができない状態に似ています。

無自覚だという点において、さらに根深い問題があります。

話を女性の化粧に戻すと、女性の凄いこところは、実態把握が適切にできている点ではないでしょうか。

自分の顔かたちの特色をきちんと掴んでいるからこそ、化粧によって欠点を隠し、長所をより引き立てることでナチュラルな顔を作りあげることができる。

企業経営も、自分は何者かを知り、実態把握をどこまで網羅的かつ具体的に出来ているかどうかが、何をするか以前に重要な立脚点になります。

そういう意味では、過去の結果としての財務的な数値は、知るべき事実のほんの一部に過ぎません。

新たな戦略や手法につい目を奪われがちですが、それ以前に現状把握と今後のモニタリングのための高性能なセンサーを準備することが、長い目で見るとより重要なことであることを強調しておきます。

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