長寿企業が次の100年を生き抜くために必要なリバイバルプランとは

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長寿企業のメリットは経営資源を豊富に蓄えていることだ

この記事の中で、日本の創業100年以上の長寿企業の数が世界一多い理由について、一般的に信じられていることに疑問を呈し別の仮説を提示しました。

その中で、実は最近になって長寿企業の倒産が増えている状況があることに触れ、変化のスピードが加速する時代を乗り切るために、長寿企業はむしろリスクを抱えている可能性についても示唆しています。

しかし、長寿企業はデメリットだらけということではなく、若い企業にはないメリットがあります。

企業再生に携わっていると、再生が首尾よく進む場合とそうでない場合があります。

その違いを生み出す理由はいくつかありますが、長寿企業の方が再生可能性は経験上高いと言えます。

なぜかというと、長寿企業は広義での経営資源(リソース)をたくさん持っていることが多いからです。

その理由をボディビルダーが体を作りあげていくプロセスを例とし考えてみます。

大会に向けてボディをビルドしていくためには、大きくわけて次の3段階を踏む必要があるそうです。

  1. たくさん食べて贅肉と脂肪を身に付ける。
  2. 筋トレによって贅肉と脂肪を筋肉に変える。
  3. ダイエットによって脂肪を極限まで落とす。

ここで注目すべきは、1番目の太る必要性があるという点です。

筋肉質のイイ体になりたからといって、いきなり筋トレしたりダイエットをしても筋肉量が増えないという話は、企業経営にもあるヒントを与えてくれます。

長寿企業は、「贅沢を厳に戒め、倹約実直を励行すべし」を旨とした家訓を持っているところが多く、身の丈経営を行うことでムダがないはずなのですが、実際のところは100年も商売をしてくれば、知らず知らずのうちに、いろいろなところに贅肉と脂肪が溜まっています。

だからこそ、真剣に筋トレやダイエットを行えば、最初からヒョロヒョロの場合と比べたら、はるかに彫りの深い彫像を作り出すことができます。

つまり、リバイバル戦略の点から言うと、資源の多さは選択肢が多さを担保し、戦略の自由度が高まることで、その結果成功の確率をあげることが可能になります。

また、長寿企業は一族の個人資産までを含めると豊かな資産背景を持っていることが多いのですが、これはリバイバルを成功させるために多いにプラス材料となります。

これは、長寿企業がなぜ潰れないかという理由にもつながっています。

倒産という状況は、それに至る原因はいろいろあっても、最終的に資金がショートした状態になります。

だから、黒字でも倒産はあり得るわけです。

裏を返せば、どんなに赤字でも資金がショートしなければ企業は倒産することはありません。

企業の業績に対しても平均回帰性が働くという立場で考えると、企業の業績はよいときもあるし逆にわるいときもあります。もっと単純化して黒字のときもあるし赤字のときもあると言い替えてもいいでしょう。

仮にいま赤字だったとしても、この悪い時期を乗り越えれば(もちろん居ながらにしては無理ですが)、つぎに黒字の時期が来るはずです。

でも、資金がなくなれば、つぎの黒字の時期を迎えることなく倒産することになります。

要するに、資金の多さは、戦略的待機時間を伸ばす効果があるのです。

長く事業を続けている企業は、たいていの場合、優良な土地や有価証券といった資産を相当量持っています。

つまり、いざというときには、それらを売却したり、担保に入れて金を借りたりという資金手当てを容易にすることができます。

株式会社林原が資金があれば倒産しない好例

2011年に会社更生法の適用申請をした、岡山の株式会社林原の場合で言うと、三代目の社長が戦後数年で買い漁った土地が約20万坪(約66万平米)もありました。

その後、地価が1000倍以上に高騰したために、バブル景気のころは、1兆円の資産を保有すると言われていました。

その資産的背景があったからこそ、四代目の林原健社長は「よそで手掛けていて儲かりますよということは一切やらない」「10年20年かかっても構わない。問題は時間ではない。出来上がったときにどれだけの価値をもたらすか」という強気の考え方で、トレハロースを筆頭とする独創的な商品開発を可能としてきました。

しかし、売上高200億円未満の企業で有利子負債が1500億円を超えている状態になっても、社長以下誰一人、損益状況はおろか資産状況すら正確に把握していない状況へつながり、最終的は倒産の憂き目にあったのです。

それもこれも、地価が下がったといても、まだ3000億円くらいの資産はあるだろうという淡い認識がもたらした結果です。

でも、資金があるということは、それくらい有利なことなのです。

本格的に事業を立て直すので、とりあえず1年間は社長の役員報酬はゼロでお願いしますと言われて、「それもやむなし」と個人資産を切り崩すことができる場合と、「それでは家族の生活が・・・」という場合では、おのずと取り組める内容と時間に大きな違いが出来てくることは、多言を要しないことだと思います。

だから、長寿企業のリバイバルは、その気になれば成功の確率が高いのです。

長寿企業のリバイバルで行うべき3つのこと

長寿企業こそ、崖っぷちに追い込まれる前に、再生ではなく再興(リバイバル)を積極的に推進するべきだと考えています。

企業が長期期間に渡って存続していることは、それ自体素晴らしいことです。

でも、100年、200年続いて来たことが、つぎの100年の生存を保証するわけではありません。

不易流行という考え方を大事にしている長寿企業は多いのですが、実際に話をしてみると、具体的になにを「不易」として、なにを「流行」とするかの切り分けが曖昧模糊(あいまいもこ)としていることが多いのです。

あるいは、不易流行の中味は具体化されていても、ちょっとピントが外れているという場合もあります。

そこで、長寿企業は過去からの延長ではなく、過去の遺産を活かしつつも現在をスタート地点とした未来を創り出していくために、つぎの3つの取り組みをすることを提言しています。

  1. 意志決定基軸の確立
  2. 経営基盤の柔軟化
  3. ブランドづくり

意志決定基軸の確立と言われても、家訓や社是がすでに存在しいて、それを大事にしていますという反論がよく返ってきます。

では、家訓は経営の意志決定をシステマチックにおこなうために、そのままで役立つものなのでしょうか。

  • 賞取りに走らず品質を保つ
  • 作り手こそ真の使い手であれ
  • もの云わぬものにものを云わせるものづくり
  • お客様本位
  • 三つの気 一 英気 二 活気 三 気配り
  • 謙虚、誠実、正直に、商うまえに人間として生きる
  • 知足
  • 投機・相場に手を出すな
  • 大きくするな
  • 入りて見よ桜の奥に又桜
  • 中庸、程よし
  • 行雲流水

誤解を恐れずに言うと、含意は深いものばかりですが、このままで意志決定に一貫性をもって適用するには抽象的過ぎます。

また、先ほど触れたように、不易流行における不易の部分が何かを明確にする必要があります。

不易の中には、自社の本当の強みやこだわりというものが当然に含まれてくることになります。

さらには、長い歴史があるからこそ培われている悪い意味での認知バイアスを排除することも必要です。

つぎに、組織や財務といった経営基盤が、長寿企業であるからこそ肥大化したり硬直化している例を数多く見てきました。

意志決定基軸の確立をすることで、一貫性のあるブレのない意志決定を実現したとしても、短期的に100%の成功は保証されません。

もちろん成功の確率を高めることに努力をしますが、より重要なことは結果に振り回されて自らの価値観を喪失しないことです。

そのうえで現実的かつ実践的な経営とは、予期せぬ事態の発生を前提として、変化を迅速かつ柔軟に行うことができる経営基盤を整備しておくことです。

3つ目のブランド化については、最後に項目を分けて取り上げます。

長寿企業ほどブランド化に力を入れるべきだ

長寿企業の業種内訳を見ると、酒造業を筆頭に約半数が製造業に属しています。古くから続いている製造業の常で、顧客第一という家訓を掲げていても、よい商品を作れば誰かが買ってくれるという作り手目線が強いことが多いのです。

つくれば売れた時代、すなわち強い商品の力に頼った仕事のやり方が蔓延していて、組織やシステムが売れる商品を作ることができなくなっています。

そこでは、危機感が希薄で安穏の経営陣が居座り続け、社員は顧客を見ず、社内では政治劇が繰り広げられ、いい加減な管理資料による「思う・感じる」経営がはびこっていました。

ときを経て、売上が不振になってきたので、重い腰をあげて顧客が商品を選ぶ仕組みを追い求めたところ、市場全体が同質化に陥り、こんどは模倣によるコスト競争という不毛の荒波に揉まれることになりました。

これからは、長寿企業としての資源を活かして商品力を高めていくためにはブランドが必要になってきます。

競争戦略は、競争相手との相対的な価値を高めるステージから、絶対的な価値を確立するステージに入って来たのです。

ところで、日本の長寿企業を見ていると、諸外国とは異なる2つの特徴があることに気づきます。

それは、創業以来行っている事業の分野が必ずしも一致していない企業が多いということと、屋号や社名が大きく変わっていることが多いということです。

「水に流す」とか「ご破算にする」という過去に執着しない日本人が持つ潔さがあったからこそ、企業として長寿となり得たという結果にも結びついているのでしょう。

日本人は自分ではブランド品が好きなことからわかるように、イメージ価値が大好きであるにも関わらず、これを正しく評価すること、ましてや生み出すことが苦手です。

これは最近の傾向ではなく、長寿企業においても社名や屋号が変わっていて、一貫不変のロゴや社名が維持されているばかりではありません。

この点においては欧米のグランメゾンの方が、ブランドの維持とそれに伴う価値について、明確なこだわりを持っている企業が多いのです。

一方日本では、長い歴史の中で世界に冠たる文化を醸成してきた実績を持ちながら、ブランド価値構築の意義を無形の資産形成とは考えずに、プロモ-ションのための一つの手法くらいに考えている経営者が多いと思います。

だから、ブランド戦略に短期的なリターンを求め始めたりして、真の意味でブランド化ができないのです。

余談ですが、1992年にdocomoが民営化した際に、CIを実施しフィロソフィ・ブランド表現としてロゴの作成を行いました。このロゴはなかなか秀逸だと今でも思いますが、わずか16年後の2008年に再度CIを導入して、小文字のみの赤一色のロゴに変更されました。

その結果、すっかりセールス・ブランドとしての位置に格下げされてしまった感を強く持っています。

何か大きな販売上の戦略を実行するにあたって、「ロゴでも思い切って変えようか」という話ではないはずですが、日本におけるブランド戦略の下手さが、こんなところにも現れています。

長寿企業であれば、時間の積み重ねの価値を十二分に知り得る立場であるので、ストーリーを持ったブランド化を腰を据えて行う意義を理解できるはずです。

昔から、「老舗の土台を築くのは、三代目あたりの養子」と言われています。創業100年3代目の経営者で舵取りされている企業こそ、ブランド構築によるリバイバルを積極的に行う時期ではないでしょうか。

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