企業の強みとはなにか?

競争優位・差別化
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「強み」をあいまいな定義のまま多用する時代

就活中の学生が考えるプロフィール文から企業が策定する事業戦略リポートの中身に至るまで、世の中に溢れかえっている言葉の一つが「強み」です。

個人や企業のレベルに留まらず、安倍政権が起案した『日本再興戦略』の中にも「強み」というワードが頻出しています。

いまや国家レベルでも「強み」がキーワードなのです。

当然、プロフェッショナルな立場で仕事をしているコンサルタントも、「経営革新を成功に導くためには、御社の強みを中核に置いた事業展開を図るべきだ」と語ります。

さらにMBAホルダーは「企業のコア・コンピタンスを明確にしたうえで経営資源の選択と集中を行い、ケイパビリティを一段と高めることで確固たる競争優位を築くべきだ」と助言します。

夜な夜な市井の居酒屋の片隅で繰り広げられるビジネス談義の場で、議論の主導権を一気にたぐり寄せて、できるビジネスマンとしてスノッブを気取りたかったら、こう問い掛けるに限ります。

「ところで、そういう君の強みは何だね?」
「その方法は、我が社の強みを生かすためにどう役立つのかい?」

誰しも「強み」を語る世の中ですが、この現象に対して刮目すべきは、多くの人が関心を持っている点ではなく、定義が曖昧なままに、これほど「強み」という言葉が頻用されている点にあります。

もし、ビジネス談義の中で、「そういう君は、どんな“強み”があるのかな?」という質問を繰り出すことで、あなたに対して乾坤一擲の打撃を与えようと企む輩がいた場合は、返す刀でこう問えれば痛烈なカウンターパンチになるはずです。

「そもそも、あなたの言う“強み”とは何を意味するのですかね?」

相手が大阪市長時代の橋下徹氏のように能弁なら、「質問に対して質問で答えるな。しょーもない」と斬り返される可能性がありますが、そうでなければ9割以上の確率で、相手を絶句させることができるはずです。

このように、強みという言葉は、多くの人が定義を曖昧にしたまま気軽に使われている状況があります。

企業の「強み」の既存の定義とはなにか?

ここでは、企業の「強み」に絞って、その定義を考えてみます。

中小企業白書に見る企業の強み

少し古い資料ですが2005年度版『中小企業白書』に以下の記述があります。

<中小企業の「強み」を活かした経営革新>

経営革新に際しては、経営者が自社の「強み」や「弱み」を把握する必要がある。

「強み」とは、他社が何らかの事情で真似できない技術やノウハウを保有することで、他社に対して優位性を持つことである。

通常、世の中に存在する企業は、他社に対してなんらかの「強み」を持っているが、現実の企業では、自社の強みが何であるのか把握していないことが多い。

また、「強み」と考えている部分が実は強みでなかったりすることもある。

例えば、「繁盛している飲食店の店主は、自分の店の味が優れていると思い込んでいるが、実は駅前という立地環境が他店より優れていただけ」という場合などである。

「強み」「弱み」の分析を行う手法としては、損益分岐点の把握、SWOT分析、PPM分析、生産性分析等があるが、これらの分析を行っている企業の方が、経営革新の目的を達成している企業の割合が高い。

ピーター・ドラッカー氏が語る企業の強み

もう一つ、大御所が語る強みの定義を引用します。

ピーター・ドラッカー氏は、『プロフェッショナルの条件』(2000年ダイヤモンド社)において、「強みとは何か」という項目で、以下のように記しています。

誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。

それさえ間違っていることが多い。しかし何事かを成し遂げるのは、強みによってである。

弱みによって何かを行うことはできない。

強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。

何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちに書き留めておく。9か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。

私自身、これを50年続けている。そのたびに驚かされている。

「企業の強み」をあらためて定義する

『中小企業白書』における強みの定義は、世間の最大公約数的な表現です。しかし、定義が曖昧なため、この意味で強みが明らかになってもイノベーション(革新)もインキュベーション(孵化)も起こらないでしょう。

ドラッカー氏の強みの定義は、「強みを知る方法」として述べられていますが、他のことについては簡潔にして明瞭な表現で正鵠を射るドラッガー氏も、強みの定義については分かりづらい。

では、企業の「強み」とは何か?それは、こうなります。

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