「攻撃は最大の防御なり」の本当の意味を知って経営に活かす

経営脳のトレーニング
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「攻撃は最大の防御なり」の本当の意味とは

「攻撃は最大の防御なり」というよく知られた言葉があります。

この言葉の意味を「下手に守りを固めるよりも、思い切って攻めに出た方が防御力が高まり、結果的に勝利にもつながる」と理解している人が多いと思います。

たしかに、子ども時代のケンカを思いかえすと、泣きじゃくりながらプロペラのように両腕をぐるぐる振り回して暴れる子には手の付けようがありませんでした。

でも、この言葉の本当の意味は違います。

言葉の出所をたどると、孫子の『兵法』に行きつきますが、実は「勝つべからざるは守るなり、勝つべきは攻むるなり」のなかの一部にすぎないのです。

つまり「勝てそうもないのならとにかく守れ、勝てそうな戦いにおいては、攻撃こそが最大の防御になる」ということを、孫子は言いたかったわけです。

「勝てそうもないならとにかく守れ」は当然として、勝てそうな場合でも、同時に守りを考えない戦略は最終的に敗北につながります。

戦史をひもとけば、旧日本陸軍によるインパール作戦は、補給線という守りを軽視したために、10万人の部隊が3万人戦死4万人餓死するという歴史的敗北を招いたのです。

企業においても、優れた商品を持っているからといって、売れるにまかせて拡大一途の経営をしたために、財務や組織上の問題が無視できないほど大きくなり、短命に終わったというケースは意外に多いのです。

アクセルのみでブレーキがない経営は危険

東京都内で仕事をしている方は、玉子屋という仕出し弁当屋さんをご存じの方が多いはずです。

この企業は、ちょっと変わった企業理念を持っています。

玉子屋 企業理念 ~ 事業に失敗するこつ

1  旧来の方法が一番良いと信じていること
2  もちはもち屋だとうぬぼれていること
3  ひまがないといって本を読まぬこと
4  どうにかなると考えていること
5  稼ぐに追いつく貧乏なしとむやみやたらと骨を折ること
6  良いものはだまっていても売れると安心していること
7  高い給料は出せないといって人を安く使うこと
8  支払は延ばす方が得だとなるべく支払わぬ工夫をすること
9  機械は高いといって人を使うこと
10 お客はわがまま過ぎると考えること
11 商売人は人情は禁物だと考えること
12 そんなことは出来ないと改善せぬこと

夢や希望を描くのではなく、「事業に失敗するこつ」を明確にすることで、守りを固めることに重点を置いているのが、玉子屋の企業理念ということになります。

企業理念とするかどうかは別としても、玉子屋の着眼点は経営のセオリーとして必要欠くべからざるものです。

経営者として、バラ色の未来地図を描くのと同時に、「会社を潰すための方法」につい考えているでしょうか?

  • 社長がいまいなくなったら潰れるか?
  • 銀行が借入金の借り換えに応じなかったら潰れるか?
  • 売上高一位の取引先がなくなったら潰れるか?
  • 法的な規制が変化したら潰れるか?
  • 商圏に業界トップ企業が進出してきたら潰れるか?
    ・・・・

こうしたネガティブ・シミュレーションを行って問題が一つも出てこない会社はないはずです。

しかし、潜在的なリスクについて考慮して、具体的な対応策を実行している企業はほんの一握りです。

不都合な真実から目を反らして、間違った解釈で「攻撃は最大の防御だ!」と叫びながら、綱渡り経営をしていることが多いのです。

「勝てそうもないならとにかく守れ」「勝てそうな場合でも、同時に守りを考えろ」は、企業経営においても当てはまります。

ただし誤解してはなりません。

意味することは、不得意な科目を勉強して平均点を上げろということではなく、一発退場になるようなレッドカードをもらわないようにしろということです。

もちろん、最悪の事態を考えたり、その対策を練り実行に移すことは楽しい仕事ではありません。

だからと言って、ディフェンスを怠ったチームは必ず滅ぶという厳然たる事実を無視することはできない。

昨今の流行も手伝い、理念・ミッション・クレドといった前向きの視点に対する取り組みに力を入れる経営者が多い中、あえて「会社を潰す方法」をひねくれて考えてみてはいかがでしょうか。

おそらく、どんな会社であっても必ず、現実を直視することを避けているだけで、倒産に結びつくリスクを放置しているはずです。

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