優れた経営者に必要な「答のない課題を考える続ける力」

経営脳のトレーニング
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考える=調べるになりがちな学業優秀な人は仕事ができない

超難関大学を卒業し大手企業に就職しても、ビジネスマンとしては輝かしい実績をあげられない方がいます。

そういう方に共通している特徴は、アイデアを出す、オリジナルで考えるということが大変不得意で、自分の頭で考えることがイコール調べるという行為に置き換わってしまうところにあります。

例えば、プロジェクト・ミーティングの最後に「次回までに、〇〇〇を可能にする方法について考えてきて欲しい」という課題を出したとします。

つぎのミーティングでは、当然その方なりの考えを話してもらいたいのですが、専門書やネットで調べてきたことを延々と発表するだけで、自分の考えを一向に語ろうとしないのです。

今の日本では学業が優秀だった人ほど、考えるということが調べると同じ意味になってしまっていることが多いのです。

既存の枠内で正解を見つける学校教育や受験勉強では育たない創造性

この元凶は、学校教育や受験勉強にあるのではないでしょうか。

以下の3つの事例は、実際のテストで不正解とされた珍回答です。

次の文章を読んで、あなたの思ったことを書きなさい。
父さんは、駅のホームで裸のまま一万円礼を差し出した。
父さんはヘンタイかもしれない。
次の慣用句の意味を答えなさい。
大は小を兼ねる。
大便をするときは、一緒に小便も出る。
次の空欄を漢字で埋めなさい。
父と〇〇(せんとう)へ行く。
戦闘

なかなかセンスがある回答だと思いますが、現実には自説を試験で開陳されても、そんなものに正解は与えられないのです。

それよりも、漫画『ドラゴン桜』での教えてどおり、すでにどこかの誰かが考えた答や解法のパターンを調べた方が確実に高い点数を稼げるのが、いまの教育のあり方です。

最難問をスルーするのが試験 最重要課題として取り組むのが経営

テストでいい点数を取るためには、勉強のやり方に加えて、テストの受け方にも要領の良さが必要です。

例えば、全部で10個の問題があり、1問目が難しい内容だったとしても、2問目から10問目が解答可能であれば、1問目はスルーして残りの9問を先に解くことが要求されます。

最難問にチャレンジすることより、残りのやさしい9問を解いて90点を取ることの方が、試験にパスするためには重要なのです。

でも、経営の世界は違います。

経営で求められることは、短時間で誰でも解ける2問目から10問目までを解くことではありません。他の人が解けない1問目を解くことにこそ価値があるのです。

実は、学校の勉強でもビジネスでも90点までは、成功パターンを修得すれば誰でも取れるようになります。

しかし、100点を取るため、つまり残りの10点を取るためには、丸暗記の量を増やしたり過去問の分析期間を10年に拡大しただけでは難しく、最終的には自分の頭を使って考えるしか方法はないのです。

より厳密に言えば、受験勉強では、いかに最難関の東大といえども覚える範囲は決まっています。

しかも、9割と言わず8割できればいいのですから、要領のいい勉強の仕方と試験の受け方を知っていた方が絶対に有利です。

ところが、経営の世界には、これだけやれば大丈夫という試験範囲のようなものはありません。

ましてや、既に誰かが確立した問題の解き方を暗記して、それで80点取ったからといって優秀な経営者として認められることはありません。

認められるためには、問題の解き方を覚えるのではなく、自分で問題をつくり、なおかつ80点どころか160点、200点という周囲の度キモを抜くハイパフォーマンスを示す必要があるのです。

つまり、赤点ではないけれど、80点、90点の経営で伸び悩む社長に不足しているのは、向学心でも頭の良さでもなく、答が出るまで一つの課題を考え続ける根気ということです。

学生時代に勉強ができた人は、仕事でも80点を取るのが早いものです。だが、それだけに一つの課題をじっくり考え続けることをしてきていないことが多く、ねちねち考える習慣が身に付いていないのです。

管理職レベルや取締役レベルの仕事でどんなに優秀な成果を上げているとしても(むしろ上げているからこそ)、必ずしも経営者としての資質が備わっている保証がないことは、この考える力の質の違いを見ればわかるはずです。

考え続けることに意味がある 答を出すために考えてはいけない

「時代は、価格競争から価値競争に変わった」とか「価値創造型のビジネスモデルへ変革する必要がある」などと、多くの学者やコンサルタントが提言しています。

しかし実際に、自社の強みを源泉とした価値創造行うことで、競争を排したハイポジション・ハイプライス戦略に取り組んでみると、その実現が想像以上に難しいことに気付くはずです。

その原因は、「新しい酒は新しい革袋に盛れ」という格言を無視しているからです。

「他人が確立した成功パターンを取り入れて、最小限の努力で80点、90点を狙う」という従来と変わらないスタンスのままで、「これからは価値創造が新たな成功要因だ」と小賢しく考えたところで、上手くいくはずがないでしょう。

単なる戦略転換やビジネスモデルの刷新という手段を講じるだけで、価値を創造し続ける企業になれると考えるのは浅慮というものです。

今までなおざりにしてきた自分の頭で考え続けることを、企業文化にまで高める取り組みをして初めて、独自の価値を創造することができるのです。

では、自分の頭で考えるには、どうしたらよいでしょうか。

そのヒントは2つあります。

一つは、無駄な情報を遮断することです。

今の世の中は、とにかく情報が多すぎます。頭を情報処理という仕事から解放してやれば、放っておいても勝手にいろいろ考え出します。

テレビも見ず、ネットサーフィンも止め、新聞などは絶対に読まない。

ビジネスマンのたしなみとして、毎朝何紙も新聞に目を通すことを日課としている経営者の方がたくさんいますが、新聞など定年退職後に時間を持て余した老人が、昔取った杵柄忘れられずに暇つぶしに読むものです。

新聞には、昨日政治や経済ではこういう動きがあった、どこどこでこんな事件があったということが、ほとんど何の検証も整理もされないまま等価の記事として掲載されています。

しかも、後からウソだった、間違いだったという情報が山のようにあります。

そんな粗雑なメディアに、いったいどれほどの価値があるのでしょうか。

毎日分断された情報を見せられても、世の中の本質はわからないし、ものごとの繋がりや真の意味合いなどが読み取れるようにはなりません。

新聞には必要な情報が載っていると思っていること自体が幻想です。

二つ目は、あえてどうでもいいことを深く考えることです。

「もっと深く考えろ」と言うと、ほとんどの人が、スティーブン・R・コーヴィー著『7つの習慣』に書いてあった「重要だけど緊急度の低いこと」について考えようとします。

例えば、「社員のモチベーションをあげるためにはどうしたらよいか」とか「放置してある後継者問題をどうするか」とかです。

人は、普段から無意識のうちに考えるべきこと考えなくてもいいことを区別してしまっています。

考える力をつけるためには、この境目を意図的に破壊して、普段考えてないことを深く考えることが鍵となります

例えば、「なんで、鶏の卵は楕円形なのか」とか「なぜアメリカ人は煙草嫌いなのに肥満には寛容なのか」など、ご自由に。

こう言われても、やっぱり、多くの人は深く考えることができません。

その理由は、受験勉強を通じて深く身に染みついている答を求めるために考えるというクセから抜け切れていないからです。

試験の正解とは異なり、人生やビジネスにおいて答は一つではないのです。

たった一つの答を求めてしまうと、なかなかそこに辿り着けないときに、イライラが募ることになります。

また仮に、何か一つの答えに辿り着いたときに、思考が停止してしまい他の選択肢を考えなくなってしまいます。

考えるということは、正解を見つけることではなく別解をたくさん見つけることだ、というように、言葉の定義を変えるようにしてください。

答えを出すために考えるのではなく、思考を深めるために考える。

これが、一つのことを長く考え続けるコツです。

優れた経営脳に必要な2つの「考える力」

経営者は、決断という言葉のもとに、考えるスピードを上げ、複数の選択肢から1つを選ぶことが、考える目的だと思っている人が多い。

だから、深く長く考えて、しかも答を出すことにこだわるな、などと言われると、「そんな悠長な!」と反論したくもなるでしょう。

もちろん今後とも、そういう頭の使い方は必要です。

「時代が変わった」と良く言われますが、それは経営者の頭の使い方にも変化を求めています。

効率を高めることが利益の源泉だった時代は、決断力を高めるために考える力を磨く、という一点に集中していれば良かったのは間違いありません。

しかし、「決めるため」に考えることと、「価値を生み出すために」考えることは、同じく頭を使うことでも、その質が異なります。

決めるために考える場合には、ベストプラクティスを求めて、ときに他人の頭を借りることで、目的が達成されることがありました。

でも、独自性の高い価値を利益の源泉とするこれからの時代においては、もう一つのタイプである深く長く考える力を磨く必要があるのです。

また、先が読めず混沌とした経営環境において、決断することの難しさを実感することが増えているはずです。

それは、未来を予見する努力によって、決断力が高まらない時代になったことを意味します。

これからの時代は、決断力を高めるためにも、自分自身の判断基準を確立する必要があり、そのためには、未来を創造するという頭の使い方が求められているのです。

もうお分かりのとおり、自分の頭で深く長く考え続けることでしか、未来を創造していくことはできません。

つまり、いざという時の決断力を高めるためにも、日頃から深く長く考え続ける必要が生じてきているのです。

これら2つの「考える力」を高次元で鍛えることではじめて、21世紀の経営者に必要な経営脳を手に入れるのではないでしょうか。

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