「やり方」よりも「なんのために」を考え抜く経営の強さ

経営脳のトレーニング
Off Target Showing Aiming Mistake Lacking Confidence
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好調な企業のトップに共通した特徴は軸がブレないこと

うまくいっている会社の社長には、「軸がしっかりしてぶれない」という共通した特徴があります。逆にうまくいっていない会社では、社長が軸を見失ってぶれまくっています。

短期間で成果が現れる取り組みなら、ほとんどの経営者がやり切ることができます。しかし、大きな変革ほど、短期間では成果が現れません。それにも関わらず、変化が見られないとすぐに自信を失ってしまう社長は、改善の積み重ねをすることはできても、革新を起こすことはできません。

持続的かつ大きな変化を起こしたければ、まずは社長自身が自問自答する必要があります。「しっかりとしてぶれない軸を持っているかどうか?」もし、持っていないのなら、社長が一本筋の通った軸を身に付けるという変化を起こすことが第一歩になります。自分は棚上げにして、社員が変化することを期待しても、企業全体の変化には至らないからです。

軸がぶれない経営のために不可欠な「なんのために」という問い

ぶれない軸が身に付いてないのは、精神修養が足りないからと考えて、滝打ち修行や座禅修行などをしようとする人がいますが、そんなことをしても意味はありません。

最も重要なことは、正しい「問い」を立てることなのです。

軸がぶれまくっている企業の風土的な特徴は、問題解決指向が強い点にあります。組織内に問題解決指向が蔓延しているのです。つまり、常に「どうやるか」あるいは「やり方」ばかり考えていいる状態です。

どの企業でも社員がやり方しか考えていないのは、職責から考えて仕方のないことです。しかし、社長までもが問題解決指向に陥ってしまった企業は、遅かれ早かれ迷走を始めることになります。

では、「どうやるか」に代わるどんな問いが必要なのでしょうか。その答は、目的を正す「なんのために」という問いです。

こういう話をすると、反論をする社長が出てきます。

なんのために?
そんなの売上と利益を伸ばすため、に決まっているじゃないか!

残念ながら、こういう考え方こそが「目的」が欠落した「やり方」経営の特徴です。

そう言われても、さらに反論は続きます。

そもそも問題解決指向の何が悪いんだ?

問題解決能力はあった方がいい。しかし、「やり方」ばかり考えていて「目的」が希薄な企業の行動がどのようなものか、私たちは知っています。新聞やテレビなどで、法令違反を犯す企業、ブラックと言われる企業、クレームへの開き直りや隠蔽を図ろうとする企業のニュースが後を絶ちません。

これがまさに「目的」が欠落した「やり方」経営の特徴です。

社長の真の役割は時間軸の長い思考をすること

もちろん会社にとって売上や利益がどうでもいいわけではありません。会社が存在し続けるために、売上や利益は間違いなく必要条件です。しかし、売上や利益は十分条件ではありません。

では、企業が生存し続けるための十分条件とはなんなのでしょうか。

それを明らかにするには、先ず「企業における社長の役割とはなにか?」という問いに、自分自身が答えてみることです。

答は、以下の一文に尽きます。

社員が目先のことしか考えていない時に、将来や未来のことを考えていること。
企業を通じて事業を行うことに対して、「なんのためにやるのか」「どういう意味があるのか」「目的はそもそも何なのか」という問いを立てて答え続けることが社長の役割なのです。

「なんのために」に対する本気の答を出すことは難しい

偉そうなことを言いましたが、「社長たるもの、理念や想いを語り、将来に向けての地図を描くことこそ最重要な仕事と認識すべし」という教示は、すでに優秀な先達が語っていることに過ぎません。

社長自身が「なんのために」が大切だと考えるからこそ、企業理念やミッションやバリューやビジョンを明文化して、企業の公式HPに大々的に掲載しているのです。でも、美しい言葉に飾られた理念やミッションが会社の原動力になり、決断を迫られたときに迷いなく採用すべき判断基準になっているでしょうか。

多くの社長の本音としては、「少しでも稼ぎたい」という欲と「積み上げてきたモノを失いたくない」という恐れの方がよっぽど強い動機になっているはずです。欲と恐れを持つことが悪いのではなく、それを上回る「なんのために」に対する答えを持ってていない実態に目を向けることが大切です。

でも、お題目ではなく経営における真の原動力になる「なんのために」を明確にすることは、想像以上に難しいことです。いままで企業理念を明文化していなかった場合は、慣れないことにはじめて取り組む困難があるのは当然ですが、すでにある企業理念を見直す方が簡単なわけではありません。

長い間大切にしてきたものを疑い、場合によっては一度ご破算にすることは、過去を否定するとになるため心理的な抵抗が生まれるからです。飛躍的前進を図るためには、必ず創造的破壊が付いて回る。この創造的破壊を起こすかどうかは、正誤の問題ではなく、まさに社長の意思と決断の問題です。

「目的」を明らかにすることが「強み」の発見へとつながる

「なんのために=目的」を明らかにすることは、企業としての「強み」を抽出するうえでも重要なことです。「なんのために」への突き詰め方が不十分なままに、「強み」の定義に走っても真の「強み」は浮かび上がってきません。「なんのために」と「強み」は因果関係ではなく、一体不可分であり表裏一体の関係だと考えるべきでしょう。

昨今流行のマーケティング的なアプローチで「強み」を明らかにする手法の中には、「強みは自分では分かりづらいものだから、顧客に聞けば分かる」という主張がありますが、「なんのために」と一体不可分である「強み」は顧客に質しても分かるものではありません。

本気で取り組まなければ危険な「なんのために」を問うこと

カオス理論において「初期値に対する鋭敏な依存性」という概念があります。この理論を企業経営に置き換えると、最初に「なんのために」への答を誤ると、その後のプロセスにおいて誤りの程度が加速度的に増加することになります。

したがって、とりあえずという心持ちで「なんのために」や「強み」を形にすることは、意味がないどころか危険です。自助努力によって、自社のの存立意義や強みを考えるにあたっては、それらを見出すことの難しさを十分に理解したうえで取り組んでください。

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