戦略・戦術・実行の垂直統合~築地市場の移転騒動に学ぶ

経営脳のトレーニング
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築地市場から豊洲新市場への移転は問題だらけ

東京都の築地市場の豊洲への移転が遅れた理由として、新市場の一部で土壌汚染対策の盛り土をしていなかったことが後から判明したという出来事がありました。

新聞やテレビは、この問題を取り上げて、喧しく議論を繰り広げました。

「何でこんなことになったのか」
「誰に責任があるのか」
「今後どのような対応策が必要なのか」
「市場の移転時期はいつまで延期になるのか」

舛添前都知事の時代に、11月7日付けで市場は築地から豊洲へ移転することが決定していましたが、8月31日に小池百合子都知事は、以下の3つの理由から移転延期を発表したばかりでした。

(1)豊洲新市場の安全性への懸念
(2)新市場移転にかかる巨額かつ不透明な費用の増加
(3)情報公開の不足

移転延期が決まる以前から、豊洲新市場には、いろいろ問題があるという指摘がされていました。

安全性の面では、「盛り土」のこと以外に、主に以下の問題が指摘されています。

  • 300を超える区画で土壌汚染対策法で規定された「帯水層の底面調査」を行わずに「汚染区域の指定」から外れている。
  • 水質汚染のリスクがあるので、護岸から取水した濾過海水を使用せず真水から人工海水を作る方針が、急に白紙撤回されて、護岸取水の海水を濾過して使用することになった。
  • 地質調査のために行うボーリング本数は、日本建築学会では2万㎡あたり20~25ヵ所を提唱しているため、この基準に従うなら豊洲新市場では、少なくとも150ヵ所でボーリング調査をしなければならないことになるが、実際には8ヵ所のみしか行っていない。特に管理施設棟が建つ地盤に至っては、1ヵ所も調査が行われていなかった。
  • 水産仲卸棟4階の床が、構造設計のミスで押さえコンクリートの厚さが15cm必要なところ、実際には1cmしかない。仮に後からコンクリートを増し打ちすると、単純計算で1300トンの重さが加わることになるが、それだけ建物の上部に荷重が増した場合に、建物全体の耐震性能が担保されるのかどうか不透明である。

使い勝手の面では、主に以下のの問題点が指摘されています。

  • 市場の面積は築地の23ヘクタール、豊洲40ヘクタールと、数字のうえでは倍近くに増えているが、豊洲は市場として使用できるエリアは30ヘクタールで、しかも道路によって10ヘクタール毎に分断されて、水産卸・水産仲卸・青果にそれぞれエリアを割り当てている。特に頻繁なターレーによる物流が発生する水産卸と水産仲卸のエリアの間は、幅24mと36mの2本の地下道で結ばれているが、ここがボトルネックとなって物流が停滞するリスクが高い。
  • 床が傷むことを理由に、築地市場で床掃除に使用している海水は使用禁止され真水を使うことが求められている。(しかし、ターレーによる運搬中に海水がじゃぶじゃぶ床にこぼれるために、床掃除に海水を禁止する意味が薄いらしい。)
  • 床の耐荷重限度が1平方メートル当たり700kgしかなく、自重1000kgの荷物運搬車ターレーに1000kgの水産物を積載した場合の総重量2000kgに耐えうるのか疑問視されている。
  • 仲卸しの店舗の有効間口が132cmしかなく、マグロ包丁が使えないことが危惧されている。
  • 発砲スチロールに入れて鮮魚を冷やす「バラ氷」は、築地市場においては、1日当たり40トンの製氷能力持つ装置が2基あり、それぞれに45トンの氷をストック可能な貯氷庫が2基併設されている。ところが、豊洲市場では、製氷設備は仲卸エリアに1基のみで、しかも貯氷庫は45トンのキャパシティのものが1基しか準備されていない。つまり、バラ氷の貯氷量は築地の180トンから、4分の1の45トンへと大幅に少なくなっているため、特に夏場はバラ氷が不足する可能性が市場関係者から出ている。(東京都側は、開場後に製氷設備と貯氷設備を増設する方針を表明しているが、具体的な計画は明らかになっていない。実際のところ、そのような大型の設備を建物内に増設することは、相当難しいはずだ。)
  • 鮮魚を運んでくるトラックが荷下ろしするトラックバースはには、3つの問題がある。1つ目は、現状調査書において1日のトラック台数を間違っていること。現状調査書では、1日を5つの時間帯に分けて、各時間帯のトラック台数を計上しているが、最終的に1日の総台数を算出するときに縦計を間違えていて、実際には1,884台にも関わらず1,184台というキャパシティ設定になっている。2つ目は、現在鮮魚を運んでくるトラックはウィング車が主流で、フォークリフトによる荷下ろしはトラックの横側から行うようになっているが、豊洲市場で用意されたトラックバースはトラックの後側から荷下ろしをする設計になっているため、実情に合っていない。3つ目は、トラックバースに向かうランプウェイを10トン車やトレーラーが上がれず、4トン車しか使えないという設計になっている。(運送業者にトラックを買い替えろというつもりなのだろうか・・・)

少し調べてみただけで、豊洲新市場に関する問題点が驚くほどあったのです。

安全性については、今まさに巷を騒がせていますが、使い勝手についてもこれだけ多くの問題が生じる原因は、東京都の考え方が「築地市場をそっくり豊洲市場へ移転する」というものではないことにあります。

都の担当部局は、いま現在築地市場でどんな仕事の進め方がされているかということには興味がなく、自分たちが考える理想の市場の姿を豊洲市場で実現して、移転して来たら皆それに合わせろというスタンスなのでしょう。

彼らが実現したいことは「コールドチェーン」というキーワードに象徴されています。コールドチェーンは東京都中央卸売市場の公式サイト内にある「どんな市場をつくろうとしているの?」というページに出て来ます。

コールドチェーンとは何かと言うと、現在の築地市場はオープンなスペースで角氷とバラ氷によって「冷却」を行っているけれど、それでは前近代的だから、豊洲市場は市場全体を冷蔵庫に仕立て、建物内を10度以下に保ち、産地から消費者まで温度管理が途切れないようにし、魚や野菜の鮮度を保持しようということです。

だから、空調効率を第一に考えて、極端に開口部を少なくしたり天井高を低くした設計なのですが、おそらく少ない出入り口に人や運搬車が集中して、築地市場でのカオスだけれども完成された仕事のやり方に慣れた人たちにとっては、極めて使い勝手の悪い市場になることが予想されます。

しかも、そもそも東京都と市場で働く人々の市場の機能に対するコンセプトが異なるうえに、少なくとも新コンセプトは市場関係者が望んでいる姿ではないのだから、果たして慣れによって解決する問題なのかどうかも不明です。

築地市場の移転問題はビジネス界にとって対岸の火事ではない

このように築地市場の豊洲新市場への移転に伴う数々の問題点を目の当たりにすると、多くのビジネスマンはこう思うことでしょう。

「決定された方針が現場で実行されないのは、ガバナンスが機能していないからだ」
「組織内のコミュニケーションが不足している」
「こんな事態を招いたのに責任者が不明確で無責任体質だ」

そして最後に、「だから、お役所仕事はダメなんだ」と結論付けることになります。

たしかに、これだけ目を疑うようなミスとか手抜き同然の事実が明らかにされると、「東京都の職員は、どういう仕事をしているんだ」「民間企業では考えられない」と、自らの仕事や会社に照らして思いたくなる気持ちは分かります。

でも、果たして本当に民間企業の仕事の進め方は、東京都のそれとは大違いで、「経営陣が決定した方針は、一糸乱れず現場で実行されている」「社内の風通しは良くてコミュニケーションは円滑である」「手柄は部下のもので、失敗は上司の責任である」と言い切れますか。現実に自分の会社では、どうなのでしょうか。

今回の築地市場の移転にまつわる諸々の問題は、昭和の頃の仕事の進め方がソックリ残っているために生じていると考えます。そして、それは「お役所仕事」だからではなく、官民を問わず日本全体に根強く残っている時代遅れになった「常識」に、多くのワーキング・ピープルが無意識に支配されているからなのです。

ですから、築地市場の移転に伴うゴタゴタを見聞きして「対岸の火事」だと思っているようでは、同じ穴の狢となってしまいます。むしろ、「他山の石」と捉えることが、私たちにとって大切なことなのです。

そこで、時代遅れになった「常識」とは何かを解き明かすときにピックアップするキーワードは、「戦略」「戦術」「実行」の3つです。

これまでの戦略思考スタイルが抱える問題点とは

企業で仕事をするビジネスマンは、経営陣であるか社員であるかを問わず、ほぼ全員が無意識にある考え方のクセを持っています。

それは、まず「戦略」を決定して、それに基づいて「戦術」を決めるという順番を疑いもしないということです。

あたかも、まず「憲法」を制定して、それに基づいて「法令」を定めるように、上から下に向かって、ビジョン・理念→戦略→戦術→実行という順番で決めていくという考え方のスタイルを常識として持っているはずです。

これは、「機械論」という近代社会のパラダイム(潮流)に支配されている結果です。

例えば、私たちが機械を開発したりプログラムを組むとき、まず「概念設計」をして、「基本設計」を行い、続いて「詳細設計」に落としたうえで、最終的に「組み立て」「コーディング」をします。

このように対象を機械のように見立てる思考のスタイルを当然とする人が多いのですが、それは20世紀の機械文明の見事な成功のなかで、知らず知らずの人間に染み付いた思考のクセに過ぎません。

だから、これまでの戦略思考においては、まずは戦略が決まって、それからトップダウン的なプロセスで戦術を決めてきました。

豊洲市場の盛り土問題が発生したプロセス

今回、豊洲市場で新たに発覚した「盛り土問題」ですが、この検討プロセスはこうなっていました。

まず、専門委員会で有害物質の拡散を防ぐための基本的な方法として「盛り土」を決定し、その後技術委員会へ引き継がれて、具体的な工事方法について議論をしています。

その技術委員会は「当会は盛り土の工事方法を検討するためもので、敷地のどの部分で行うかを議論する場ではなかった」と釈明しているので、「敷地のどの部分で行うか」という実行段階の話は、さらに「下流」の機関が決定したという全体像です。

この検討と決定プロセスは、まさに機械論パラダイムの典型的なスタイルです。

付け加えると、専門委員会と技術委員会が開催された2000年当時に都時事だった石原慎太郎氏は、9月13日のテレビ番組で「僕はだまされたんですね。結局、してない仕事をしたことにして予算を出したわけですから。その金、どこ行ったんですかね?」などと、被害者のような口振りで発言をしています。

石原慎太郎元都知事「だまされた。都の役人は腐敗している」「東京五輪でもいろんな問題が…」

石原氏の「常識」としては、東京都のトップである知事は、役人から報告されたことに対する決裁をするのが仕事で、その後決定された通りに進められているかどうかについては関知しない。報告された通り、あるいは指示した通り実行するのが当たり前だというマインドセットであることを、この記事の発言が証明しています。

東京都のトップがこういう考え方なのだから、後は右に習えで、専門委員会や技術委員会の委員が、「決められた責任は果たした、その後のことは次に引き継いだ者がキチンとやるのが当たり前だ」と思うのは不思議ではありません。

しかし、この石原氏の発言を聞いて「無責任だ」とか「人まかせだ」などと軽々に批判することはできません。

中期経営計画を策定して全社に対して十分に説明をしたのに、現場で取り組む意気込みが感じられない状況とか、常に顧客第一主義を口にしているのに、クレームでトラブルが起きて状況を知ると、戦略や理念を理解していないのはけしからんと思う経営者は多いはずです。

それは、「私は最も上流の重要なことを決めたのだから、後は社員がやるだけだろう」と思っているから出てくるボヤキです。つまり、石原慎太郎氏のマインドとそれほど大差はないことになります。

戦略の重要性が高いにも関わらず戦略が機能しない状況

停滞する市場環境において、厳しい状況を打破するための「戦略」の重要性が高まり、20年前には一部の人しから知らず、口に出すと特別な感じがしていました。

今や「戦略」は、中小企業でも個人の生活においても気軽に使われるようになったことで、戦略の重要性は一層高まっています。

でも、「正しい」戦略を採用したにも関わらず、期待した結果が得られないことが多いのです。

戦略は正しくても勝てない読売巨人軍

プロ野球では、セリーグで広島の25年振りの優勝が決まりましたが、凋落傾向に歯止めがかからないとはいえ、いまだに読売巨人軍が球界を興行の面で牽引していることに変わりはありません。

そのジャイアンツのV9以降の戦略は、「生え抜きにこだわらず、資金力にものを言わせて、他球団から4番打者やエース級の投手、そして外国人助っ人をたくさん集めて強いチームを作る」ことのはずです。(行動から見た限り、それ以外の戦略があるとは思えません。)

戦略的な次元では、最高の選手を集めれば、最高のプレーが生まれ、勝利という最高の結果が得られると考えることは、完全な的外れではありません。

でも、そこを戦術的な次元で考えると、具体的にどの選手が必要で、打順や守備位置、投手のローテーションといった具体的な組み合わせをどうするかという課題が発生してきます。

欲しいと思った選手が必ず獲得できないこともあったり、ホームランバッターばかりで打順が組みづらいとか、戦略としては最高だったとしても、戦術のレベルでは実行できないことがしばしば起こります。

戦略は抜群ではないが勝てた広島東洋カープ

逆に、決して最上策とは思えない戦略でも、戦術のレベルで絶妙な打ち手を繰り出すことで、成功を収めることもあります。

2016年セリーグで広島が優勝したのは、その好例です。エース投手である前田をメジャーに移籍させるという戦略は、確実に勝てる投手を失うという点ではマイナス面が大きかったにも関わらず、黒田投手と新井というアラフォーのベテランを上手に活かすことを中心とした戦術的な打ち手によってチーム力を上げ、優勝という最高の結果を収めています。

大切なのは、戦略を検討するときには、単に戦略レベルだけで様々な打ち手を考えるのではなく、同時に打ち手が戦術レベルで実行可能かどうかを考えながら検討を進めていくことなのです。

また逆に、戦術レベルの打ち手が戦略にどのような影響を与えるかを考えながら、検討を進めていくことも大切です。

戦略と戦術を双方向で往き来する次世代の戦略思考

豊洲新市場の汚染物質対策のように、専門委員会は方法論を考えるのみで技術レベルのことは検討せず、技術委員会は工法を考えるのみで施工場所の範囲は検討しない、というような一方通行の検討プロセスでは、今回のような問題は、起こるべくして起きたと言えます。

これからの時代「考える」ことに取り組む場合、抽象性と具体性の間を頻繁に移行しながら、世界の持つ「深み」を見失うことなく、その「全体性」を把握するという思考スタイルが必須になります。

それは、経営の現場において戦略と戦術を垂直統合することを意味します。

したがって、これからは「戦略が正しくても、戦術が正しくなかったために失敗した」という言い訳は許されません。

そのように戦略と戦術を分離して考える発想そのものが、これまでの考え方のクセに毒されている証拠に過ぎません。

「戦略は正しかったが、戦術で失敗した」と言って済ましていることは、医者が「手術は成功したが、患者は死んだ」と言い訳しているのと同じ錯誤を含んでいることに気付く必要があります。

ただし、より「具体的」に言うと、戦略と戦術の統合を図るとは、ただ単に「戦略を議論しつつ、同時に戦術を議論する」という簡単な話ではありません。

豊かな暗黙知を持ち、鋭い洞察力を持つ現場に近い熟練のスタッフが、そうした検討プロセスに参加しなければ実現は不可能です。

戦略と戦術が正しくても実行段階で多発する失敗

改革を決意して、経営者がさまざまな現場を訪れて社員とひざ詰めのミーティングを繰り返したにも関わらず、実際には旧態依然とした行動が現場に蔓延している。

会社の叡知を集めたり、あるいはコンサルティング会社に高額なフィーを支払って決断した戦略を、あとは粛々と実行すればいいだけなのに、現場に浸透しない。

顧客の嗜好が思ったより保守的だ、試算どおりにコストが下がらない、ライバル社が突然新技術を開発した・・・

そこで、「やはり、戦略よりも現場力、実行力を上げることが重要なのではないか」という迷いが生じてきます。

でも、こういう事態が起きるのは当然です。戦略にしろ、それに時間軸を加えた計画にしろ、過去の分析結果ではなく将来に向けての計画である以上、実行に移した後で想定外のことが発生するのは避けられません。

戦略の実行とは、あらかじめ決めておいたステップを一つひとつ着実にこなしていけば出来上がるプラモデルのようなものではなく、常に新たな課題に遭遇し、見直しを求められる泥臭い地道な作業です。

戦略はある一時点において作られるものですが、事業は毎日継続するのだから、戦略の見直しと戦略の実行は上位と下位の関係ではなく一対と言うべき関係です。

現場に移されてはじめて戦略の強みや欠陥が明らかになり、実行と修正の繰り返しがあってこそ持続的な競争優位に近付くことが出来るのです。

このように、戦略の失敗と一口で言っても、実は戦略自体の巧拙の問題だけではなく、実行で躓いていることがよくあります。

「戦略は正しかったが、戦術で失敗した」は許されない言い訳だと言いましたが、「戦略は正しかったし戦術も正しかったが、実行で失敗した」はあり得ることなのです。

経営の現場では、この切り分けが厳密に出来ていないことが多く、失敗を活かしきれない原因の一つになっています。

戦略策定や経営計画立案が最重要だという考え方は通用しない

言い替えると、あとはやればいいだけの「戦略」や「計画」はあり得ません。

考え抜けば「正しい戦略」に行き当たるという前提、「計画どおりにやれば必ずうまくいく」という起点は、もう通用しない時代なのです。

このことは同時に、「戦略を考えることは難しいけれど、出来上がった戦略を実行することは簡単だ」というこれまでの常識を否定することを意味します。

そういう常識があるから、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループに代表される戦略策定を専門としたコンサルティング会社の方が、ハンズオンで実行支援までをカバーするコンサルティング会社より格が上だ、とコンサルティング業界内でもクライアント企業においても、ほぼ全員が思っているのです。

だからこそ、企業側は提案内容が優れているネームバリューが低いコンサルティング会社よりも、万が一失敗しても「最高のコンサルティング会社にに頼んでもダメだった」という言い訳が使えるという理由でマッキンゼーを選択したり、就活している学生は、同じ外資系のコンサルティング会社でも、マッキンゼーは志望するけれど、オペレーションや実行支援を得意とするA・Tカーニーやアクセンチュアは眼中にありません。

また企業内で、経営企画室は希望すれば誰でも異動できる部署ではありません。通常、そこに属する人間はMBAを持っているような社内でも選りすぐりの優秀なスタッフにしているはずです。

なぜ、こういう傾向が顕著に見られるかというと、ほとんどの経営者やビジネスマンの頭の中に「戦略思考=頭脳 現場=手足」「本社=エリート 現場=兵隊」というステレオタイプな常識が刷り込まれているからです。

今ほど世の中の変化の幅もスピードも穏やかだった時代は、戦略をデータやコンセプトという抽象的なレベルで構築しても、現場の感覚と大きくかけ離れることは少なかったかもしれません。

しかし今日においては、具体的で異なる顧客や競合を相手にしている現場で、雲の上の人が頭脳で作り上げた戦略を共感を持って理解できないのは無理からぬことです。

しかも、そうした戦略立案担当者の多くは、過去の成功を評価されて現在の地位にいるのですから、むしろ現実を見ていないのは雲上人の方なのです。

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