「儲ける」と「金持ちになる」の違いを理解する

経営脳のトレーニング
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起業した社長であれば誰でも儲けたい

会社を興して社長になろうと考える人はどんな目的を持っているのでしょうか?

事業を通じて実現したい夢や希望があるのは当然として、苦労も多い社長になった以上、やっぱり事業で儲けて金持ちになりたいという目的があるはずです。

創業社長ではなく二代目社長だと、親の会社を継いで楽をして高収入を得ようと皮算用する人が増えても不思議ではありません。

しかし、最初からある誤解を持ったまま社長になる人が多いいため、実際に商売を始めてしばらくすると、「こんなはずじゃなかった」と呟くことになるのです。

それは「儲ければ、金持ちになれる」という誤解です。

最初からお金を持っている人は事業への投資意欲が低い

結論を先に言うと、日本において起業するという行為は、金がない人が考えることです。

なぜなら、初めからお金を持っている人は起業などせずに投資に回すからです。少し刺激的な表現かもしれませんが、次の質問について考えてみると合点がいくはずです。

年末ジャンボ宝くじは、1等+前後賞で10億円という高額配当金だが、この10億円の宝くじが当たったら全額事業へ投資するか?

10億円の一部を使って事業を起ち上げたり、既存事業へ投資をすることはあるでしょうが、おそらく全額を事業に突っ込む人はいないでしょう。

なぜなら、事業に投資することはリターンが不確実でリスクが高いと考えているからです。

私たちの多くは、基本的に事業は危険なものだと思っています。

だから、元金を持っている人は、不動産や株式や金に投資することに一生懸命になることはあっても、事業投資に熱を上げる人は滅多にいません。

やったとしても、大怪我をしない程度に留める。資産防衛という意味では、正しい見識だと思います。

お金を持っていない人が借金して事業を始めて金持ちを目指す

その一方で、今は貧乏でも、事業で金持ちになろうと考える人のほとんどが、少ない資金で事業を始め、銀行から金を借りて事業を拡大し資産家を目指します。

日本の中小企業は自己資本比率が低いと言われることが多いのですが、その原因は金融機関からの借入金にあります。

年商1億円、営業利益率10%で年間1,000万円の利益を出しても、営業外損失として借入金利息を支払い、400万円程度の税金が発生し、残りのほとんどすべてを返済元金で持っていかれる。

これでは、事業で儲けることができても、決して金持ちにはなれません。

たとえば5,000万円の退職金を元手に起業して軌道に乗せられた人は、「事業で金持ちになったのではなく、最初から金持ちだった」が正解です。

一方で、事業で金持ちになろうとする人に付いてくるもの、それは負債・借入金になります。

優良な中小企業を維持するためには、常に一定の借入金残高が必要になります。まして事業が急成長する場面では借入金も正比例して急成長することが多い。

ところが、企業が上場すると借入とは無縁になることができます。上場企業には、さまざまな資金調達の制度が用意されているからです。

例えば、上場会社のいくつかについて、2020年の決算における売上高経常利益率を見ると、花王は12.59%、日本レストランシステムが9.23%、イオンは2.39%となっています。

これらの上場企業と利益率のレベルが同じかそれ以上の中小企業はいくらでもあります。でもその経営は困難を極めて、金持ちとは言えない状況です。

インフレ基調の時代では中小企業でも金持ちになれた

でも、20年前までならどんな中小企業も借入金を気にすることなく金持ちになれました。

その理由は、インフレが借入金を相殺してくれたからです。

銀行からの借入で不動産を購入し、店舗を建設して小売業を行う。仮に事業での売上高経常利益率が1%でも昔は金持ちになれたのです。

不動産の価格が上がり含み益が大きくなっていくので、不動産を売れば大きな利益が生まれ、売らないまでも銀行は含み益分の貸し増しをしてくました。どんな事業をしていても金が生まれてくる構造があったことになります。

もちろんこんな状況では、経営改善だの財務志向のビジネス・モデルだのに目を向ける経営者はいません。

インフレはすべての失敗を覆い隠すから、誰も失敗せず、したがって誰も学ばない時代が続きました。これは本当の企業経営ではありません。だから、昔の事業での金持ち伝説は、今では役に立たないのです。

事業で金持ちになると、必ずと言っていいほど「借金」が付いてくる。インフレ時代ならそんなこと気にする必要さえなかったのに。

ところが、これから事業を始めようとしたりこれから事業を承継しようとすると、この問題が大きくのしかかってきます。借入金の元金と利息は事業収益できっちり返さなければならないからです。

先ずは儲からないことには話になりませんが、儲けたところで金持ちになれるわけではありません。

デフレ基調な時代に中小企業が金持ちになる条件

「儲ける」ことは、「金持ちになる」ための必要条件ではあるが十分条件ではありません。より厳密に言えば、一度も黒字になったことがない事業を売却して大金を手に入れたYoutubeの創業者みたいな人もいるので、必要条件でもないかもしれません。

金持ちになることは企業経営の最終目的ではないかもしれませんが、だからと言って夢や希望が叶うなら清貧に甘んじるべきとは微塵も思いません。

せっかく起業する、あるいは企業経営をするなら、結果的に「儲かる」だけではなく「金持ち」な会社にするべきです。

金持ち企業になれば、経営者の不安の大半は払拭され、未来への投資余力が格段に増加するでしょう。

その結果、未来をより良くするために今まで以上の時間とエネルギーを掛けることにより、企業の好循環が始まるはずです。

そういう企業は、社長も社員も取引先も、間違いなく幸福度がアップします。その意味で、金持ちな会社を目指すべきです。

そのためには、良い商品を持つだけでも、無借金経営になるだけでもダメです。

ビジネスモデル・財務・人と組織・リーダーシップといった企業活動全体が、「金持ち」になるようにデザインされていなければ到底無理でしょう。

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